神経内科

後期研修 診療科別研修プログラム

1.診療科の特徴

 秋田赤十字病院は、秋田市のほぼ中央に存在する総病床数480床の総合病院です。歯科を除くすべての診療科があり神経内科もその一環を担っています。神経内科は、神経病センターとして地域の政策医療に割り当てられた30床の病状を含め、全体で約40床を稼動しています。年間新患数は約1200名、年間入院数は約500名の診療規模で、神経内科医療を行っています。

 難病医療を中心にした神経病センターの診療と、救命救急センターを擁しそこを受診する神経疾患救急の診療を受け持つ役割があり、神経内科common diseaseのみならず、急性期神経疾患、難病医療のすべてを経験するに適した病院と言えます。

 内科各分野との合同検討会、脳神経外科との合同検討会は定期的に行われるほかに、それ以外の診療科とも随時症例検討する場面を設けることができ、神経内科だけにとらわれない幅広い視野での症例の検討をすることができます。検査もほぼすべての検査を当施設内で行い、診断することができるため、他の施設に依頼することなく、患者さんの状態に応じて必要な検査を計画し、施行し、診断することが可能です。在宅の筋萎縮性側索硬化症患者さんを中心に訪問診療が行われており、それに参加することで地域医療の実態に接することも可能です。また地域の神経内科を有する施設との合同検討会(秋田臨床神経懇話会)が定期的に行われ、施設を超えた人的交流の場面があり、様々に角度を変えた考え方を得る機会も用意されています。

2.診療実績(神経内科疾患に関して)

  1. 年間患者統計(病床数30)
    • 初診外来患者数 1121人
    • 再診外来患者数 23707人
    • 延べ入院患者数 522人
    • 平均在院日数 19.8日
    • 神経疾患剖検数 3例
  2. 入院患者の内訳
    • 脳血管障害 226人(発症7日以内の急性期216人)
    • 神経変性疾患 66人
    • 筋萎縮性側索硬化症 19人
    • パーキンソン病 30人
    • 他のパーキンソニズム(PSP,CBDなど) 3人
    • 多系統萎縮症(SDS,OPCA,SNDなど) 8人
    • 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く) 6人
    • 認知症性疾患 4人(アルツハイマー病2人、その他2人)
    • 免疫関連性中枢神経疾患(MS,脊髄炎,ベーチェット病など)14人
    • 末梢神経疾患(GBS,CIDP,CMTなど)9人
    • 筋疾患(筋炎,皮膚筋炎,ジストロフィーなど)9人
    • 神経感染症(脳炎,髄膜炎など)脳症 23人
    • てんかん(原発性,症候性)47人
    • 腫瘍15人
    • 中毒性神経疾患25人
    • 内科疾患・代謝性疾患に伴う神経障害 19人
    • その他 64人
  3. 臨床検査実施件数について
    • CT 539件
    • MRI/MRA 629件
    • PET/SPECT 73件
    • 脳血管撮影 5件
    • 頭頚部血管超音波検査 133件
    • 脳波 108件
    • 神経伝導検査(針筋電図検査を含む) 111件 
    • 誘発筋電図(SEP,VEP,ABR,MEP)15件
    • 筋生検 4件
    • 神経生検 1件
  4. 医療介護・福祉・在宅医療
    • 特定疾患申請 278件
    • 介護保険意見書記載 281件
    • 在宅呼吸管理/IVH管理 3件

3.研修期間(神経内科専門医を目指す場合)

  1. 1年目  
    • 指導医・上級医による指導をうけながら、主治医として外来・入院診療の研鑽を積みます。神経内科症例検討会を通じて神経内科の考え方や知識を学び、必要な診断方法や治療方針を習得していきます。また、主治医ではなくとも、カンファレンスや総回診を通じて幅広い疾患に対する理解と経験を深めます。検査業務については、指導の下に適切に施行出来るようにします。救急外来では、神経内科救急に対する処置について研鑚を積みます。外来では、退院後の患者の治療継続を行い、疾患の縦断像を把握出来るよう努めます。指導医や上級医の指導の下、各種書類を適切に記載する。医療安全・医療倫理の講演会には積極的に出席します。
  2. 2年目
    • 引き続き、指導医・上級医による指導をうけながら、主治医として外来・入院診療の研鑽を積みます。神経内科症例検討会を通じて神経内科の考え方や知識を深め、診断方法や治療方針を習熟してきます。カンファレンスや総回診を通じて幅広い疾患に対する理解と経験をさらに深めます。基本的な疾患では適宜指導医・上級医に相談しながら一人で診療可能なレベル到達を目指します。検査業務についても基本的な内容は一人で施行出来ることを目標とします。救急外来では、神経内科救急に対する経験を深めます。積極的に外来業務を行い、疾患の幅広い知識を身につけるとともに、引き続き疾患の縦断像を把握出来るよう努めます。指導医や上級医の指導の下、各種書類を適切に記載する。医療安全・医療倫理の講演会には積極的に出席します。
  3. 3年目
    • 主治医として外来・入院患者を受け持ちながら各種検査を行うとともに、臨床研修医の上級医としての指導も行ないます。教育関連病院との連携を通じて在宅の状況を把握出来るように努め、全人的な診療の中での神経内科診療の習得を目指します。神経学会の定めるミニマムリクアイアメントを適切に達成出来るよう、指導医と相談し、不足する研修内容は関連病院、学会ハンズオンセミナー、各種学習会などを通じて習得出来るよう研鑽に励みます。

 *当施設では,神経内科専門研修の間に,希望に応じて一定期間,脳神経外科,小児(神経)科,内科分野各科などの関連領域に関する専門的研修も行うことが可能です。

4.研修目標

 後期研修では以下の内容を身につけ、研修終了後には神経内科専門医取得可能となる。

  1. ミニマムリクアイアメントで定めた神経学的症候や病態の意味を正しく理解し、適切な神経学的所見をとることが出来る。
  2. 神経生理、神経放射線、神経超音波、神経病理、神経遺伝学をはじめ、各種神経学的検査結果の意味・解釈や治療の内容を理解出来る。またミニマムリクアイアメントで定めた検査、治療、手技は自ら施行し、適切な判断を下すことが出来る。
  3. 適切な確定診断を行い、治療計画を立案し適切な診療録を作製できる。ミニマムリクアイアメントで定めた疾患については主治医として十分な診療経験を有している。
  4. 診断・治療方針の決定困難な症例や神経内科救急をはじめ迅速な対応が必要な症例などにおいて、自科の専門医、他科の医師に適切にコンサルトを行い、適切な対応ができる。
  5. コメディカルと協調、協力する重要性を認識し、適切なチーム医療を実践できる。
  6. 患者から学ぶ姿勢を持ち、患者と患者の周囲の者に対するメンタルケアの大切さを知り、実践できる。
  7. 神経学的障害をもった患者の介護・管理上の要点を理解し、在宅医療を含めた社会復帰の計画を立案し、必要な書類を記載出来る。
  8. 神経内科救急疾患における診察の仕方、処置の仕方について学び、実践できる。
  9. 医療安全、倫理、個人情報保護の概念、医療経済について必要な知識を有する。
  10. カリキュラムの修得度を定期的に自己評価するとともに、指導医の評価も受けつつ、自己研鑽を積み重ねる。
  11. ミニマムリクアイアメントは、全項目中80%以上においてAもしくはBを満たす研修を積むことが出来るよう、自施設における習得が不十分な内容は、神経学会をはじめ関連学会の主催する教育講演、生涯教育講演、ハンズオンセミナーなどに積極的に出席し、学習する。
  12. 日本内科学会、日本神経学会などの学会主催の総会、地方会で積極的に演題発表を行うことができ、ポスター発表や口演発表ができる。
  13. 示唆に富む症例については積極的に論文としてまとめることができる。
  14. 臨床研究を進めるに必要な基本的な知識を有している。

5.所得可能な認定医、専門医

 日本内科学会認定医 日本神経学会専門医 脳卒中学会専門医

6.後期研修後の進路

 秋田赤十字病院神経内科に引き続き勤務することは可能です。

7.その他

 希望に応じて秋田大学医学部神経内科、新潟大学医学部神経内科、秋田県立脳血管研究センター病理などの施設と連携し、研修を行うことができます。