しくじり先生(しくじりスト?)のお話

研修センター委員 太田 翔三

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 簡単に自己紹介をさせてください。
 私は新潟県出身の38歳酉年で、2008年に秋田大学を卒業した後、当院にて初期研修を行いました。その後、母校の小児科学教室に入局し、希望していた新生児医療を中心に研修させていただき、現在、当院新生児科にて勤務させていただいております。
 いきなりですが、私は“よい初期研修医”であったとは、とてもじゃありませんが、いえません。学生時代に新生児医療をやってみたいと決意した後、研修先として当院を選択したのも、当院が秋田県の総合周産期母子医療センターで、少しでも早く新生児医療に触れてみたかったという理由からで、当院の初期臨床研修の〇〇がよいから等ではなかったのです。
 しかし、厚生労働省による臨床研修の基本理念には以下のようにはっきり謳われています。“臨床研修は…、将来専門とする分野にかかわらず、…一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう…。”つまり、「医療におけるジェネラリストとしての基本を身に着けてよね」ということと思います。ですから、最初から将来専門とする分野のことだけを(”だけ“は言い過ぎ?)考え、初期研修医をしていた当時の私は“よい初期研修医”であったはずもないのです。
 ですから、今さらここで、当院の臨床研修プログラムOBとして、先輩面して当院の臨床研修プログラムの長所を滔々と語るつもりは毛頭ございません。しかし、逆にそんな私だからこそ、お伝えできることもあるのではないか、と思いました。

 当院NICUにて、小児科専門医の取得を目指す先生方と一緒にお仕事をさせていただいておりますが、そのような先生のなかには、当院で初期研修をされた先生(当院初期研修医としての後輩にあたる)もチラホラ、というか結構います。NICU業務専従で全科当直等から久しく遠のいている私が、その先生たちと話をしていると、「小児科の医師なのに、成人のことやそのcommon diseaseやemergencyをよく知っているなあ、そしてまた、その知識がよく整理されているなあ」とびっくりすることが多いのです。「これくらいの年の大人がこういう症状で来たら、□□と△△だけは否定して、あとは症状の程度次第で、専門科へコンサルトもしくは明日外来受診ですよね!」とか爽やかに言われると憧れてしまいそうです。クラっと。そんな羨望性めまいだけでなく、実際、そのような知識は一見全く関係がないと思われる新生児医療においても役立つことがあります。それは、医療が人を相手にするものである以上、他のどの専門分野でも同じなのではないでしょうか?

 今になって思うことは、当院でもっと積極的かつ自主的に初期臨床研修をしておけばよかったなあ、というのが正直なところです。時は戻すことができませんので、わたしは初期研修経験者としては、まさにしくじり先生(しくじりスト?)ですが、逆に、今もし自分が初期研修医なら、こういったことをしたい等、怒涛のような後悔とともにアイディアが湧いて来ます。そして今、当院であれば、それらはできます。また今すぐできなくても柔軟性をもって研修医の先生の意見や自主性を受け入れてくれる“風土”もここにはあります。だからこそ、研修しくじりストの私でも、臨床研修センターの一員として微力ながらお手伝いさせていただけることもあるのだと思っております。

 私のほかにも、当院初期研修OB/OGで、現在当院に勤務されておられる先生は大勢いらしゃいます。そのなかには、まさに総合診療専門医を目指して、その研修の一環で戻ってこられた先生もおられます。また地元の離島医療を目指され、県外から当院に来られ、数年にわたりさまざまな科(外科や内科、麻酔科、整形外科、産科)で後期研修されて行かれた先生もおられました。当院での研修のよさを知っていただくのは、私よりそのような先生方と実際にお話しされた方がよいと思います。
 しかし、昨今の全国的な新型コロナウイルス感染のため、例年のように当院に見学にいらしていただき、実際のところを見て、聞いていただくにはもう少し時間が必要そうです。それまでは(それ以降も?)病院ホームページやSNSなどを活用しながら、当院の初期臨床研修について、随時発信させていただけましたらと思って、手探り状態ではありますが、懸命に取り組んでいるところです。
 願わくば、この困難な時代であるが故に通常より多くの不安を抱え、これから医師になろうとされている医学生のみなさんに、少しでもお役に立てる情報が届きますように。
 もちろん、なにか疑問点などありましたら、いつでも連絡ください。お待ちしております。