厳冬期礼文島での地域医療研修

 礼文島の冬は観光客がいないので、患者は純粋な島民のみです。吹雪の日は外来がスカスカになるということも、しばしばありました。訪問診療では雪深い地域へ行きました。一旦、家に入ると出てこられないのではと思うほど、小高い場所にある家です。このような地域に生活する、島民の力強い息遣いが感じられました。年始特有の行事として、幼稚園で検診や小児の予防接種も経験しました。また、院内で小手術として、脂肪腫の摘出術と足趾の切断術を経験しました。さらに、心原性脳塞栓症の患者をフェリーで稚内の病院へ転院搬送するという事態が発生し、研修医2名で同伴しました。

 冬季は夏季に比して、島民が減少するので、診療所としては比較的穏やかに時が流れました。観光らしいことも制限されるし、容易に買い物へも行くこともできません。決して、恵まれた生活環境とは言えませんが、物質的な豊かさからは得られない、精神的な豊かさに根差した真の地域医療について考える良い機会になりました。

(小野 宏晃 記)

 

←臨床研修たよりTOPに戻る

年度別アーカイブ