プログラム責任者から医学生へメッセージ

臨床研修における軟教育と硬教育の活用

秋田赤十字病院プログラム責任者 河合秀樹

秋田赤十字病院プログラム責任者 平野秀人

 いささか硬い表題となりましたが、まず軟教育と硬教育についてご紹介しましょう。

 今から約100年前の明治42年、遠藤隆吉博士により2つの教育方法が紹介されました。軟教育とは教育をうける者の理解の努力をゼロに近づけることを理想とするもので、現代風に解釈するとまずは興味を持たせ、やり方を示し、分からないところを教え、やれるまで反復練習をさせる、といった教育指導方法です。これに対して硬教育とは教育を受ける者にあえてハードルの高い、困難な経験をさせ、それを克服するためにどうすればよいかをすぐに教えずにまずは自分で考えさせる、といった教育法です。2つの教育法はそれぞれ長所短所があります。軟教育は知識・経験の乏しい者が初めて学習を受ける際に必須であり、小学校ではこの指導が行われています。生徒は知識を得ることに興味を持ち、学校は教育を受ける場であることを感覚的に身につけます。ところがこの教育法は教育をうける者が受動的で、自分でものを考える習慣が身につきにくいという短所があります。現代風に言うと指示待ち人間養成教育、とでもなりましょうか。一方、硬教育はある程度の知識・経験のある者が困難を自力で克服することで自信・達成感につながり飛躍的にレベルアップするのに効果を発揮します。ただし、全くの初心者に硬教育を施すと挫折しやる気を失うことになるでしょう。

 さて、前置きが長くなりましたが現在の初期臨床研修制度になってから臨床研修において初期研修は軟教育、後期研修は硬教育を行っているところが多いのではないかと思います。研修医は初期研修を終え後期研修に入った途端、一人主治医や当直など責任を負うことになります。当然、自分で方針を考え診療することも増えてきます。前述の如くハードルの高い、困難な経験を自ら克服することが硬教育の成果ですから一人前の医師になるためには通らなければならない時期です。大いに苦労してレベルアップを図るべきです。ところが初期研修で軟教育に浸りすぎてしまっていたらどうでしょう?困難に立ち向かい克服できるでしょうか?当院の初期研修では1年次は軟教育から始まり、2年次にはファーストコール、学会発表、論文執筆など中等度の硬教育も軟教育と合わせて行っております。そうすることで困難に遭遇した際、克服するために自分で考える習慣が身につき無理なく後期研修へと進むことができます。

 更に一人前の医師になるためには膨大な勉強・経験に加えて思いやりの心が必要です。思いやりの心を持つことで患者・家族から信頼を得ることができるでしょう。思いやりの心を持つことができるのは自分で苦労し、痛みを感じないと人の痛みは分かりにくいかもしれません。また人とのコミュニケーションを大事にすることで協調性を育み人の意見に真摯に耳を傾ける素養が醸成されます。当院では研修医しゃべり場、研修医旅行、地域医療研修などを通じて人とのコミュニケーション能力や思いやりの心を育める環境を提供しています。

 医学生の皆さん、当院で研修し一人前の医師を目指してみませんか?